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親と同居の壮年未婚者

1.はじめに
総務省統計研修所における調査研究の一環として、近年、総じて増加傾向にある「親と 同居の壮年未婚者(35~44歳)」について研究分析を行ったので、その結果の概要を紹介 する。以下に述べることは筆者の個人的な見解である。1)
 
2.使用したデータと用語の定義 本稿で紹介する統計は、総務省統計局が毎月実施している労働力調査 2)のデータのうち、 1980 年から 2014 年までの、いずれの年次も9月の全国データを使用して特別に集計した ものであるが、一部、過去に公表されたものも含まれている。

本稿で取り扱う「親と同居の壮年未婚者」は、山田昌弘中央大学教授が 1999 年 a)に提 起した「パラサイト・シングル」と類似している。パラサイト・シングルは、学卒後もな お、親と同居している未婚者のうち、基礎的生活条件を親に依存している者とされている。

本稿では、まず、後半の条件(基礎的生活条件を親に依存している)を考慮しない数値、すなわち、パラサイト・シングルだけではなく、親にはほとんど依存せずに同居している者や、親を介護又は支援するために同居している人等も含まれている数値を、「親と同居の壮年未婚者」として表示している。

次に、後半の条件も考慮した数値については、近似 値として、完全失業者 3)、無就業・無就学者 4)及び臨時雇・日雇者の合計値を表示してい る。
 
3.特別に集計した結果の概要
 
(1)「親と同居の壮年未婚者」は 2014 年に 308 万人 と 1980 年以降最多
全国の「親と同居の壮年未婚者」数をみると、1980 年には 39 万人で 35~44 歳人口の僅か 2.2%であったが、1990 年は 112 万人で 5.7%、2000 年は 159 万人で 10.0%と増加の一途をたどり、2010 年には 295 万人で 16.1%と急増し、2014 年は 308 万人で 16.7%と、実数及び割合ともに増加が続いている。

このことから、「親と同居の未婚者」が壮年層まで拡大してきていることが分かる。これは、団塊ジュニアが、2006 年から 35~44 歳の年齢層に入ってきていることが一因である。しかしながら、実数のみならず割合も上昇していることから、この年齢層における単なる人口増加のみが主な要因ではなく、それ以外の要因が内在していることをうかがわせている。(図1、表1参照)
 
(2)「親と同居の壮年未婚者」の完全失業率は 2014 年に 9.1%と依然として高水準 「親と同居の壮年未婚者」の完全失業率をみると、2005 年が 9.6%(35~44 歳人口の 完全失業率は 3.8%)で、2010 年には 11.5%(同 4.8%)とピークに達した。2014 年には 9.1%(同 3.5%)と、低下傾向にあるものの、未だ高い水準で推移している。

一方、35 ~44 歳人口の完全失業率は、2005 年以降、3.3~4.8%と比較的低い水準で推移している。 このため、35~44 歳全体と、そのうちの親と同居の未婚者との間には、完全失業率で、こ の間に 4.8~6.6 ポイントという、かなり大きな差があることが特徴である。(図2、表1参照) 
 
(3)「基礎的生活条件を親に依存している可能性のある人」は 2014 年に 62 万人 
「親と同居の壮年未婚者」のうち、「基礎的生活条件を親に依存している可能性のある人」、すなわち、完全失業者、無就業・無就学者および臨時雇・日雇者数の合計についてみると、1980 年には僅か 5 万人であったが、1990 年に 19 万人、2000 年に 28 万人と増加しており、2010 年には 75 万人と急増してピークに達している。その後、2014 年には臨時雇・日雇者の減少により、62 万人となっている。

この「基礎的生活条件を親に依存している可能性のある人」は、親が死亡した途端に、深刻な生活難に陥ってしまう可能性が高いことが懸念される。すなわち、親子共倒れのリスクを抱えている可能性がある。(表1参照)
 
4.おわりに 以上述べたとおり、「親と同居の壮年未婚者」数が 300 万人を超えていること、その完 全失業率が高い水準で推移していること、また、「親と同居の壮年未婚者」が実数及び割合 ともに増加が続いていることなどが明らかとなった。 本稿が、各種行政や学術研究等のための基礎資料として一助となれば、幸いである。
 
 
1) 本研究は、国立社会保障・人口問題研究所の文部科学研究費補助金プロジェクト「結婚・離婚・再婚の動向と日本社会の変容に関する包括的研究」(研究代表者:岩澤美帆)の一環として行われている。研究内容は全て執筆者の個人的見解であり、執筆者・研究代表者が所属する機関の見解を示すものではない。
 
2) 労働力調査の詳細については、以下の総務省統計局のページを参照。  http://www.stat.go.jp/data/roudou/index.htm 
なお、労働力調査は、全数調査ではなく標本調査であるため、本表の数値には標本誤差が含 まれている。標本誤差の大きさについては、以下のページを参考にされたい。 http://www.stat.go.jp/data/roudou/10.htm (労働力調査 調査結果の誤差)
また、総務省統計研修所が特別に集計した数値は、総務省統計局が過去に公表した数値とは 必ずしも一致しない場合がある。
 
3) 完全失業者とは、次の 3 つの条件を満たす者をいう。 ① 仕事がなくて調査週間中に少しも仕事をしなかった(就業者ではない。)。 ② 仕事があればすぐ就くことができる。 ③ 調査週間中に,仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた(過去の求職活動の結 果を待っている場合を含む。)。
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4) 無就業・無就学者とは、就業、通学及び家事のいずれもしていない人のことである。したがって、通学には含まれない職業訓練のみを受けている人や病院に3か月以上入院している人なども含まれているが、それらは極めて少数であると考えられる。
一方、ニートは、一般的に、無就業・無就学で、なおかつ職業訓練も受けていない人のことを指す。
 
5) 臨時雇・日雇者の定義は以下のとおりである。 臨時雇 : 1 か月以上 1 年以内の期間を定めて雇われている者 日雇 : 日々又は 1 か月未満の契約で雇われている者
 
[参考文献]  a) 山田昌弘(中央大学教授)「パラサイト・シングルの時代」ちくま新書 1999 年                

                             2015 年 11 月 30 日 総務省統計研修所 西 文彦

 

特別養護老人ホームの存在を知りながら、親が通所なり入所を嫌がり、止む無く会社を辞め、子供が親の介護をするということが社会問題になっています。

 

私事ですが、91歳で他界(カラオケに興じていた時)した母親(車椅子)を、妻と共に同居介護した経験から、親の我儘を放置せず、通所・入所をうまく行わせて、家族団欒やら日帰り旅行を行ってきました。

 

決して一人で考えず、情に流されず、公的機関をうまく利用して、大事な人生を生きてください。